6月3日(土)~18日(日)開催のCONNECT展にあわせて、出品作家の皆さまのコメントをご紹介いたします。
寺田 開《Viewpoints》 ― 筑波大学芸術賞(卒業研究)
この作品は樹脂版を版として用いた版画作品で、樹脂版ドライポイントの凹版の要素と樹脂版の柔軟性という特徴に注目して、重ねて刷るという凸版的な要素を重ね合わせた技法を用いて制作したものである。この技法は確立された技法ではなかったため、樹脂版を重ね合わせて刷るにあたって樹脂版の厚みを0.1mm単位で検証したり、プレス機の環境を見直したり、樹脂版の版表現としてドライポイント以外の技法を模索したりと研究と並行して制作した作品である。
「Viewpoint」というタイトルには「視点」や「立場」の意味を込めている。版を重ねあわせたり、複数回にわけて刷ることで重層させた版は、様々な視点からみた映像や自分の中にある記憶をイメージして制作した。自分の中で昇華できない記憶を思い出すたびに別の要素も複雑に絡み合い自分の中では収集できなくなり、最終的には綺麗事として頭の中に仕舞い込んでしまい空っぽな映像だけがイメージとして残る。そのイメージを作品としてまとめた。
Nien Chen Yuan《イージーチェア》 ― 筑波大学芸術賞(卒業研究)
イージーチェアは、機能が形そのものであるという機能主義の概念を応用し、快適性、ミニマリズム、クラフトマンシップを象徴するデザインです。各部品はダボで接続されており、丈夫で長持ちする接合部になっています。座面と背もたれには、自然な張りと弾力性を持つペーパーコードを編み込んでいます。座面は、真鍮の支柱を利用してフレームから切り離し、レイヤーを効果的に用いて空間の変化を引き出しています。肘掛けはペーパーナイフのように伸びやかで先細りの形状で、触感を伴うエレガントな美観を表現しています。ホームオフィス、リビングルーム、ロビーなど、どんな場所に置かれても、イージーチェアはミニマリズムのスタイルと極上の座り心地を体現する洗練された作品となるでしょう。
山形 彩月《生彩》 ― 茗渓会賞(卒業研究)
私の実家は農家であり、この林檎の木は実家の林檎畑で取材を重ねて描いたものである。
私にとって林檎畑は、物心ついた時から生活の中に当たり前にあるもので、家族と沢山の時間を過ごした大切な場所だ。そんな林檎畑が最も生き生きとした雰囲気に満ちるのが、一年で一番の収穫期である十一月である。実家の林檎の木は年季の入った老木が多いのだが、この時期には、毎年変わらず沢山の実をならした姿を見せてくれる。少し物悲しい雰囲気の漂う初冬の寒空の下、枝の先まで生命力があふれるような林檎の木の姿に、私は何度も元気を貰ってきた。
家族との思い出が沢山詰まった林檎畑に生きる、そんな美しい林檎の木の姿を、卒業という大きな節目に描きたいと思いこの作品を制作した。
長井 春雅くらら《生命の種》 ― 茗渓会賞(卒業研究)
『本生命の種プロジェクトは、卒業論文の成果をもとに、生物の環境適応の仕組みを応用した建築の新しい在り方を提示する、極限環境としての砂漠に適応するためのBio-inspired建築の提案である。本提案は、ナミブ砂漠(アフリカ南部)を敷地として、そこに生態コロニーを生育し、さらに人類が休息をすることができる空間を創出することを目指す。
具体的には、外殻で乾燥から保護された生態コア(=土壌生態系)に、集水装置によって水分を供給し、人工的に保湿・養分投与することで生態コロニーの成立を援助する。生態系の成熟に応じて、人工的な機構から自立するために、段階的に生態コロニーの養分獲得能力や保水能力を生物に置き換えていく。最終的に、集水装置や生物自体の保水能力により水を、光合成する生物が不足する炭素養分を固定する。さらに、人間が排出する廃棄物が窒素養分を供給することで、半自立した生態系を内包する建築となる。
王 敬昇《欄干会大壁画-1, 2, 3, 4》 ― 筑波大学芸術賞(修了研究)
この作品のインスピレーションはキリスト教の礼拝堂の壁画から生まれた。
宗教の壁画は平面の構図と故事性などの特徴が私の興味が惹きました。情報や文化などが広がる視点から、壁画と古い印刷術としての版画は共通点を持っていると思う。そして、宗教芸術である石窟美術に興味をもっていて、膨大的な仕事の量とシンプルな造形によって、山のような重さが感じられる。
今回の作品は私もこのような力のある作品はつくりたいため、画面全体にダーマトグラフ一本を用いて長い時間をかけて、シンプルな描き方で、できるだけ密集した画面を描いた。
作品は四つで、一つの作品になるが、一点ずつでも独特な作品になれるようにしたいです。壁画のような平面的な、連続した画面が並んで、何かの物語を述べているような感じが欲しい。
夏 陸嘉《日曜日食日》 ― 茗渓会賞(修了研究)
日食がある1週間の物語を描いた作品です。この作品は、自身の小学生のころに小さい子どもの洋服業をする町で夏休み暮らした経験を持っており、実体験をベースに描かれています。絵だけで構成されるマンガというメディアで、人との生活と感情を描きます。
ストーリーは日食に関する要素が通底している、7つの部分に分かれています。子どもの視点から一週間の出来事を展開しています。線の表現力とマンガの構図を借りて、主人公と一緒に、日常の世界と非日常の想像の間にふっと引き込まれる物語を表現したいです。
セリフがないマンガとして、絵だけを通して誰もが物語を楽しめるように、文化の隔たりを少なくできないか?ということを今回の作品では試しています。
作家の皆様、コメントのご提供ありがとうございました!
CONNECT展Ⅶは6月18日(日)まで開催しております。ぜひご高覧ください。
CONNECT展Ⅶ
会期) 令和5年6月3日(土)~18日(日)
会場) スタジオ’S
茨城県つくば市二の宮1-23-6 (関彰商事株式会社 つくば本社敷地内)
時間) 10:00~17:00 入場料無料 無料駐車場あり